もう20時か、
2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50 [PINK][/PINK]  

おんなのこでも感じるえっちな小説11

1 :1:2010/02/06(土) 14:33:26 ID:Jy2hXgJK

このスレッドは女の子でも感じるえっちな小説を投稿する場所です。
男×女・オリジナル限定。二次創作・百合・801は該当他スレへ。
なお、血縁のある近親相姦はアウトです。

 なんか「おま○こ!」とか直接ドーンと言ってるのも冷めるけど、
 「秘密の果実」とかとおまわしすぎるのもかなりわらっちゃう(笑)
 オトコノヒトにちょっとSっ気があるとなお萌えvv(笑)
              (スレ1の1さん=ナナさん発言より抜粋)

■注意事項
 自薦他薦を問わず、他スレ・HP・書籍等の小説紹介はご遠慮下さい。
 ただし、投稿された方がHPをお持ちで縮刷版からのリンクがOKな場合は、
 縮刷版管理人までメール下さい。
 また、当スレ投下と同じ登場人物で他スレに投下されている小説に関して、
 「コテトリ付きでご本人様からスレ上で紹介」して頂くのは全く問題なく、
 この場合は、住人一同、とても喜びます。
 なお、(緊急避難用スレを除く)他スレやHPからの転載投稿は不可、
 あくまでネット初出限定です。

■前スレ
 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1250127662/

■過去スレ一覧
 http://www2.gol.com/users/kyr01354/bbsstory/kako.html

■おな感縮刷版(まとめサイト)
 http://www2.gol.com/users/kyr01354/bbsstory/

344 :4/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 22:51:58.04 ID:hnorscGV
* * *

「それで、同伴なわけだ」
「まて。私はキャバ嬢じゃないから」
 いや、知らないけど。
「ま、そんなに仲良さげにも見えないしね。ラブラブですぅ♪って顔じゃないもんねありゃ」
「わかってるじゃん」
 そこなんだよね。
 遅刻の原因を作ったのは私。そして――多分機嫌を損ねてしまったのであろう原因だって、まぎれもなくこの私。
 同じクラスだけど、会話した事なんてまるで記憶にないくらい疎遠な男子。
 でもあの時、知ってる顔にばったり出会って、思がけないアクシデントに心細く恐怖に震えていた私は、ちょっとした安堵感と、
もしかしたらどこの誰とも知らない人間に弄ばれていた羞恥を覚られてしまったのではという気まずさから、抑えようのない
緊張感の途切れから次々と溢れてくる涙をどうする事も出来なかった。
 おまけに、頭が混乱状態だったせいで、やたら「ちかんが、ちかんが」とそればっかりを声に出してあわあわしていたせいで、
こともあろうにひきつりながらその場に立ち尽くすしかなかったであろう彼に、痛々しい視線が向けられてしまった。
 ろくに説明も出来ないような状態のまま二人して駅員に連れて行かれてしまって、そこで暫くしてやっと平静を取り戻した
私がやっと――彼が無関係である事を話し、何とかあらぬ疑いをかけずには済んだ、と思う。
「悪い事しちゃった……」
「仕方ないよ、ゲス田だもん」
「ゲス……でも、迷惑かけたわけだし」
「そりゃそうだけど、あれじゃあぱっと見、疑いたくもなるでしょうよ」
 そうかなぁ……と肩越しにちらりと振り向き見れば、細い目がぎろりとこちらを睨んだような気がした。
 慌てて目を逸らし、何もなかったように装ってみるけど……恐っ!
「ね?……あれでマスクしてみ?コンビニ入れないよ、絶対」
「失礼だよアンタ」
 親友の早紀の毒舌を諌めつつも、それを否定できない私もどうなのか。


345 :5/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 22:56:45.61 ID:hnorscGV
「でも何であの人、ゲスだなんて言われてんの?」
「ゲスだ、じゃなくてゲス田ね。よくわかんないけど、いい呼び名じゃないのは確かよね。ごめんよくは解らない」
「あっそう」
 私も良くわからない。イントネーションの違いからして既に。
「……彼女とかいるのかな?」
 何となく呟いた独り言のつもりだったそれは、早紀の牛乳を飲む動きに支障をきたしたようだ。
「――ぶほっ!……ごほごほっ……ちょっ、あん、たっ」
「なによぅ〜?大丈夫?」
「だいじょばないっ!ていうかあんたが変な事言うから!!正気?」
「へん、て、別に……他意はないんだけど」
「ならいいけど」
 いいのか。
 辛うじて飲み下した牛乳がうまくお腹に落ち着くのを待って、パンの袋を破り始めたのだろうと思えるところで、私も箸を。
「あ、でも。やりチンて噂は聞いたことあるわ」
 今度は私が米粒を吹きかけた。
「や、やりっ……」
 言えない。最後の二文字は絶対に言えない。というか言うまい。
「なんか、らしいよ。女といる目撃談はよくあるらしいんだけど、どうも度々相手が替わってるって話。ほら、誰だったかなぁ、
 たしか中学一緒の子から小耳に」
「へ、へえ〜……。意外、というか何というか、モテるんだね」
「危険なふいんき?フンイキだっけ?あれ?ま〜いいや。とにかくそういうのが好きな女の子って多いじゃない。だからじゃ
 ないの?……けど続かないって事はやっぱ何かあるんでしょ。ゲス呼ばわりされるだけの事はあるんでしょうよ。冷たいとか」
「そういうもんかしら」
 冷たいのか。でも、そんな人が私を助けてくれようとしたのなら、それはないんじゃ。
 助けて……。
 ……くれようとしたのかしら?
 でも気に掛けてくれたのは事実だし。
「やっぱりちゃんとお礼しないと」
「えぇ?物好きねぇ……まあ、仕方ないか。あんたどうせこのままじゃ気が済まないんでしょ?」
 苦笑いする早紀に頷いてみせる私。
 一度気になると、素通りできない性格だから。


346 :6/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 22:58:33.53 ID:hnorscGV
 授業が終わるのを待って、教室に人が少なくなってきた頃を見計らって近付いた。やっぱり人目があると、今朝の事もあるし。
「あの〜、ちょっと……」
 恐るおそる声を掛けてみると、机の中を覗いていた顔を目だけ向けるような形で私を見上げ
「え?俺?」
とちょっと低めの声を返す。
「あ、ごめんなさい」
「何が?」
「えっと、い、色々」
 呼び止めたのが迷惑だったのか。早く帰りたかったのかな。そりゃそうだ、私だっていつもは何もなければさっさとそうしたい。
「それだけ?」
「えっと、ちゃんとお礼言いたくて。……っ、増田くんがいてくれて助かったし」
「……別になんもしてないと思うけど」
「そう……かもしれないんだけど、あ、えっと、いや、でも、あの時安心したのは事実だし、迷惑掛けちゃったからお詫びとか
 とにかく何かお返ししたくて」
 うっかりあだ名が出そうになって慌てて取り繕ったけど、ばれては無さそうでほっとした。
 と同時に初めてまともに彼と会話らしきものを交わしてみて、それ程嫌な奴という印象を受けていないことに気づき、あだ名
の意味に疑問を抱く。
「物好きだね、あんた」
「そうかな?別に普通だと思ってるんだけど……」
 確かに庇ってくれたとか、声を上げて変態退治をしてくれたわけではないけれど、別にあの時、私をスルーする事だって出来た
筈だ。なのに、そうはしなかったし、それで私は何とかショックな気持ちを抑えられた。
「……まあ、まさか前科持ちになるとこだったとは予測しなかったけど」
「――っ、それは……ほんとに……すまないと思って」
 私が取り乱したためにうまく言葉が繋がらなくて、あの場にいたこの人がこともあろうに『痴漢の犯人』だと勘違いされた。
 わけわからないまま駅長室だかに連れてかれて、私がやっと事情を話せるよう落ち着くまで、学校に来れずに付き合わせて
しまったのだ。
 誤解は解けたけど、迷惑掛けまくったのは本当だし、心底申し訳ないと思っている。


347 :7/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 22:59:56.04 ID:hnorscGV
「とにかく、お礼でもお詫びでも何かさせて欲しいと思って」
「……わかった」
 拒否されなくてほっとした。別に『いらない』と言われればそれだけなんだけど、逆に素直に受け取ってくれるというのなら、
多分そこまで気分を害してはいないという事でもあると思うからだ。
 誠意の通じる人なのだろう。良かった。
「じゃあ、今からでも?」
「あ、うん、いいよ。私は早い方が」
「――そうなの?」
 帰り支度をすべて終えると、少し驚きの混じった意外そうな表情を浮かべて立ち上がった。
「え、うん。そういうもんじゃないのかなぁ」
 何かおかしい事でも言ったかな?
 足早に教室を出て行こうとする増田くんの後を慌てて追い、距離を詰めながら彼より数歩下がった位置を歩く。
「見かけによらないんだな……」
「はい?」
 私が?ですか。普段どんなイメージ持たれてるんだろう。というより、何を。
「そう言えば、増田くんと話するのって初めて?だよね」
「ん、そうだな」
 考えてみれば、同じクラスになったのは二年生になってからだし、班を組む機会でもなければ席も離れてるから、雑談はおろか
挨拶すらまともに交わした覚えがない。
「いつもあの電車に乗ってるの?」
「そうだけど」
「へえ、私も入学してからずっと同じなんたけど、知らなかった。あの路線だと大体うちの学校の人はあまり見かけないから、
 すぐ目につくと思ってたんだけど」
「……たまたま。いつも始発駅から乗ってて、座ってるからだと思う。ほんとは隣の車両だけど今日は乗り遅れそうになって、
 普段の手前に飛び込んだから」
「そうなんだ!いいなあ、私座った事ないよ。羨ましい……」
 だったら痴漢に遭うこともなかったろうにと思うと、ちょっとばかり悔しいやら、思い出して腹も立つやら。
「あ、あれ?」
 下足箱を通り過ぎてスタスタと先を行ってしまう。


348 :8/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 23:01:04.20 ID:hnorscGV
「増田くん?」
 学校出るんじゃないの?
 本当は帰る前に済まさなければならない用事でもあったんだろうか。だったら今度にして貰えば良かったのかもしれないか
とか考えていると、渡り廊下を突っ切って校舎裏の自販機の前で止まった。
「ここでいいか」
 増田くんは独り言みたいに呟くと、辺りを見回し鞄を置いた。
「ここ?」
 並んだ紙パックの100円と書かれたパネルの文字と、彼の顔を交互に見つめる。
 確かにあまり裕福なお財布事情の私ではないが、駅前のコーヒーショップで奢る位のお金は入ってたはず、だ。今月はまだ
手をつけてないもんね。
「気を遣わなくて大丈夫だよ?」
 それ位するつもりでいたんだから。
「見られても平気なタイプ?」
「え〜……別に、考えたことなんかないけど」
 はた、と気が付く。そうか、増田くんは困るのかもしれない。今朝の事もあるし。
「ごめんね、私は平気だけど……増田くんは見られると困るよね」
「いや、そっちがいいなら別に」
「そう」
 財布を出そうと鞄を置いて、
「じゃあ何しよっ……」
と振り向いたら、身体がぐらりと傾いて、背中にばん!と衝撃が走った。
 痛いとか一体何がとか考える暇も無く、唇を何かに塞がれて息が出来なくなった。
 あまりの勢いにぎゅっと目を瞑ると、ぐいぐいと身体全体を壁に押し付けられて逃げ場を失うと同時に、声と酸素を同時に
奪っているものの正体を理解する。

 ――キス、されてるんだ、私。

 少しずつ状況を把握するにつれ、冷静に頭の中が整理されてくる。
 えっと、私は今、クラスメートに唇を奪われていて、それで、ここは学校で、で、どうしてこうなってるのかというと……。
「いっ――いやあああぁぁぁっ!?」
 ありったけの力を振り絞って、彼の胸元を思いっきり両腕で押し戻した。


349 :9/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 23:02:13.08 ID:hnorscGV
「な、ななな何……を」
 離れた途端、目に飛び込んできた増田くんの唇に釘付けになりかけて声を上げそうになった。
 い、今、キスした?私、したよね?この人と。
 ていうか、誰か。誰かいませんか!?見てないよね?見られてないよね!!
「気にしないって言ったから」
 キョロキョロと高速で首を振りまくる私に反して落ち着き払って頭なんて掻いている。
「誰も見てないよ、多分。滅多にここに来る奴はいないんじゃないの?」
「そっ、そういう意味じゃない!!」
 ここはかなり玄関から奥だし、学食が閉まっている今は人なんか確かに滅多に来ないだろう。運動部の部室は逆方向だし。
「見られたいタイプかと思った」
「どこをどうすればそんなっ……!?大体いきなり何を」
「誘ってきたんじゃなかったの?」
 信じられない一言に、私の頭は一瞬にして真っ白になり――一瞬にしてめらめらと何かが燃え上がった。
「そんなわけないでしょー!?どこをどーすりゃそういう意味になるのっ!!」
「あ、違うんだ」
「当たり前でしょー!?大体何でよく、知りもしない……人にそういう真似……できるわけっ」
「……あ、おい……」
 この人としちやったんだ、私。今日初めてまともに口聞いただけの相手で、別に付き合ってるとかそういうのでもなくて、
友達にさえまだなれるかどうかっていうところのクラスメート。
「……初めてだったのにっ……」
 好きだとか言われたわけでも、勿論私が好きだって言ったわけでもなくて。
「ふぁ、ファーストキス……だったのにっ……」
 うわあ、どうしよう。事実がはっきり突きつけられるにつれ、段々腹が立ってきた。と同時に、悲しくて悲しくて、後から
ぽろぽろと涙がこぼれてくる。
 流石にそれで悪いと思ったのだろう。
 チャリチャリとポケットから小銭の音を鳴らしながら、自販機のボタンを探っている。
 ゴトンと落ちてきた紙パックを無言で差し出すと、私の手にそれを握らせた。


350 :10/10  ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 23:03:19.45 ID:hnorscGV
「……ごめん」
 ひんやりとした紙の包みを、瞑った瞼に押し当てた。
 もう一回ゴトンという音がして、上履きがコンクリートの床をジャリジャリ擦る。
 しゃがみ込んだ私の向かいに同じようにして目線を合わせてきて、ふうと溜め息をつく。
「意外だと思ったんだよね。大人しそうに見えて大胆な事するなーって。お礼だっていうから、てっきり」
「てっきりって……普通そんな考え方はしないかと……」
 どういう思考回路してるのか。
「俺そんなんばっかだからさ」
「はあ!?」
 思わず顔を上げた。
 細い目で視線を彷徨わせながら眉間に皺を寄せている。なんのことはない、飲んでるものが冷たいのに堪えているのだ。
その証拠に口からストローを離すとほっとした様子を見せた。
 こんな時に呑気なもんだわ。
「そんなにショックなもんなの?減るもんじゃないと思うけど」
「そういう問題じゃない」
「……もしかして初めては好きな人と〜ってやつ?」
「悪い?」
「別に」
「……増田くんはどうして?」「誘われたのかと思って。俺来るもの拒まずだから」
「!……へ、へえ、もてるんだ」
「さあね」
「……彼女いないの?」
 今更だけど一応ね。
「いない」
「そう」
 それならいいけど。やっぱり、後味悪いよ。私が彼女だったら嫌だ。彼女じゃなくても、どうかと思うけど。

 ――なんか、最低。

 確かにゲスかもこいつ(たった今からそう呼ぶ位置におく事に決めた)。
「小松原さん、だっけ。初めてが俺みたいので悪かったな」
 初めて名前をまともに呼ばれた。けど、それはぼんやりとした記号のような音でしかないように聞こえる。
 私のキスはこんなものなのか。
 手の中に残る紙パックをしばし眺め、てくてくと去っていく背中を見送りながら、思い切りゴミ箱に放り込んだ。


351 : ◆jj9fnfoR3g :2012/02/29(水) 23:04:47.90 ID:hnorscGV
書き忘れましたすみません
以上です
続きます


352 :名無しさん@ピンキー:2012/02/29(水) 23:55:19.82 ID:UQ594tTu
イイヨイイヨ

353 :純愛ぱるぷんて・2 1/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:46:09.12 ID:u5huaOGp
 ――また今日も同じ目に遭ったら――。

 電車を待ちながら昨日の出来事を頭の中で反芻すればする程、気分が暗ーく沈んでく。
 周囲に自分の気持ちをわかるよう表現できるとしたら、私の周りはきっと今どんよりとした灰色の空気が渦巻いているのに
違いない。
 漫画で言えば雨雲しょっちゃってます、みたいな。どのみち辛気臭いことこの上ない。
 溜め息ばかりが零れる唇をそっと撫でてみる。
 生まれて初めて知った他人の唇の感触は、思い描いたような甘くふわふわした幸せなドキドキなんか産み出すことなどなく、
ただ失望や現実の残酷さを思い知らされただけだった。
 それすらもう夢であるかのように何の跡形も残さず朝は来る。
 いつもと何も変わらない、筈――の通学風景。
 ホームへと滑り込んできた車両の窓に、その姿を見つけてしまうまでは。

 振り向きながら背中越しに窓の外を気にしている風だった。
 一つ隣の車両にいる彼に気付いていながら、全くそんな素振りを見せないつもりになって、いつものドアから電車に乗り込む。
 これまで以上に気合いを入れて足を踏ん張り、しっかりと辺りを警戒しつつ吊革を握りしめる。
 つけ込まれてたまるか、こんな時に。
 昨日はあれからかなり落ち込んだけど、考えてみれば、あんな男の一人や二人に振り回されてる自分が情けなくなるにつれ、
段々腹が立ってきた。
 あれは事故のようなものだ。
 勝手な勘違いによる思い込みで突っ走られて良い迷惑だと思う。
 人のお尻を無断で触って不快な気持ちにさせた何処の誰とも知れない奴だってそうだ。
 犬に噛まれたと思って忘れてしまおう。いつまでも引きずるなんてバカバカしいにも程がある。
 ――ただ、一言謝ってくれただけでもあっちの方がましかもしれない。
 同じにしたらさすがに悪いかしら。


354 :2/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:47:52.78 ID:u5huaOGp
* * *

「そんなん、同じよ、同じ!許せん。あんた軽く見られすぎ!そこは怒っていいんだからね?」
「そうですか」
 いいなあ、この性格。どっちかというと優柔不断になりがちな私と違って、竹をぶった切ったような早紀は本当に男前だ。
 私が女なら惚れる。――あ、女だっけ。
「女なら何でもいいのか。だからって見境なさすぎるんだよね。よりによってあんたなんかに何でまたそんな気起こすかな」
「それどういう意味?」
「あら。誉めてんのよ」
「どこがだー」
「あたしが男なら、お尻の重そうなあんたみたいな女こそほっとかないって事よん」
「そりゃどうも」
 一見それ程似通ってもいない早紀と私の友情の理由は、こういう所に共通項があるんだろうと思う。
 駅に降り立った時、人波に揉まれる中から抜け出すのに精一杯で、一緒に降りた筈のゲス男にかち合う事はなかった。
 もっとも、これまでにもバッタリ顔を合わせた覚えもなかったので、不思議はない。
 しかし、朝の私は周囲をちょっと見回す程の余裕も無いのか。自分を客観的に見られる機会はそうあるものではないので、
それにはちと反省。
 休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、席へ戻る早紀に手をふりつつ振り返ると、ふいに視界に飛び込んだ人間に目を
奪われた。
 これまで気にも留めた事のなかった男の一挙一動を何気に眺めてみる。
 長めの前髪が気になるのか、肘をついて上目遣いにそれを摘んだり引っ張ったりして弄っている。
 邪魔なら切りゃーいいのに。
 細い目がこっちに向いて、私の視線とばっちりぶつかる。
 なぜか焦る私。何でだ。
 でもこっちが素知らぬ顔を決め込むより先に、向こうの方がぱっと目を逸らして俯いた。
 そのくせ、二、三回目をぱちくりさせては上目遣いと目を伏せたりとを繰り返す。
 ――何よ?
 もしかして、またなんか勘違いされてるんじゃ。
 冗談じゃない。私はもう関わる気なんか無いんだから。


355 :3/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:51:22.90 ID:u5huaOGp
* * *

「小松原さん、ちょっと」
 昼休みが終わる前にトイレに行こうとして教室を出た時だった。
「私……ですか?」
「そう。ちょっといいかな?あ、友達も一緒で良いです。すぐ済むんで」
 丁寧な物言いに、嫌です、とも言えず早紀とアイコンタクトをとり、頷く。
 ていうかあなた誰ですか。
 ちょっとこっち、と人気の少ない廊下の端まで手招きされ、しぶしぶついて行く。
「あ、俺、外山(とやま)って言います。隣のクラスのもんなんだけど、知ってる?」
「ああ、見たことなら」
「ですよねー。そんなもんだよ」
 昨年も別のクラスだった人で、今言ったようにこれまで接触のなかった人だ。
 そんな人が何を。
「小松原さん、下の名前は何て言うの?」
「は?」
「あ、えっといきなりごめん。びっくりするよね。色々聞きたいことがあって。差し支えなければケータイとメアドを……」
「あたし消えよっか?」
 早紀が居辛そうに外山くんとやらの顔を見る。
「いや、気にしないでいいですから」
「あたしが気にするんだってば」
「待ってえぇっ!」
 そう言って既に歩き出そうとしている早紀の腕をしっかと掴んで、綱引きのような体勢でずるずると引き戻した。
 嫌だ!一人にしないでえぇぇ!?
「だって告白の現場に居合わせてどーゆー顔しろっちゅーの」
「こっ!?」
 こくはく?
「誰によ?」
「はぁ?あんた本気で言ってる?鈍いのもホドがあるわ」
「にぶ……どうせそうですよ」
 とは言え、いくら私でもさすがにこの状況では理解せざるを得ないようだ。
「ん〜まあ、間違ってはないんだけどね」
「えっ?」
 ここにきて初めてまじまじと外山くんとやらを眺めてみる。
 この人が?
「俺じゃないんだよね〜」
 勘違いしかけてる事に気付いてか、苦笑いしながら否定する。
 人の好さそうな丸っこい顔に、思わず私もつられて笑いそうになる。不思議な人だ。


356 :4/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:52:22.41 ID:u5huaOGp
「じゃあ誰?もし差し支えなかったら教えてくれない?」
 すかさず早紀が突っ込む。
「や、それは、まあ……」
「だって気になるじゃない。それとも一方的に聞いておいて逃げるわけ?それってズルくない?やーよ、どこの誰ともわかんない
 奴に大事な友達狙われるなんて。つうかキモイ」
「キモ……それは参ったなー」
 私の前に立ちはだかって仁王立ちの早紀の迫力に負けたのか、しょうがなく白状するよと外山くんは溜め息をついた。
 ああ、頼りになるわあ。
「で?誰」
「ん〜……引かない?」
「相手による」
「ですよねー」
 とりあえず私の存在を思い出して欲しい。さっきから二人だけで話が進んでませんか?
「俺ね、お宅のクラスにいる奴と幼なじみでね、そいつがえらくその……小松原さんを気にしてるみたいなんすよ。で、
 ちょっと一肌脱ごうと思ったわけ」
「うちのクラスぅ!?益々聞き出さずにはいられなくてよ」
 ね?と血走った目の迫力に頷かずにはいられぬ私。ていうか早紀コワイ。
 なんでそんなに必死になるのか。
 心配してくれるのは嬉しいけど、これは人一倍強い好奇心が勝っているに違いない。
「実は……増田、なんだけど」
 私より先に早紀の方が『げっ』と小さく潰れたような声を発した。そのため当人である筈の自分は反応に困っているわけだが。
「ゲス……」
「早紀っ!」
 いくらなんでも友達の前でそれは無いって。
「いや、まあそうなるよね」
 あ、そこはわかってるんだ。
「だったら断る。あいつ何?友達使ってどーしよーっての!?」
「どうもこうも、本人だと多分、相手してもらえないって言うから。俺が、」
 あなた達……本人の意思は一体。
「何でそこまでするの?」
外山くんの声を遮って、さっきからある疑問をぶつけてみる。
「もしかして面白がってるんじゃない?……悪いけど、私、あんまりあの人にはいい印象持てない」
「そんなつもりは!……まあ多少楽しんでる感はあるかもしんないけど」
「やっぱり」
 早紀の手を引き、行こうと促す。


357 :5/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:53:43.28 ID:u5huaOGp
「あ、待ってほんとに。マジな話、からかうとかそんなつもり、ないから。いや、育実が自分から女の子の話するなんてなくて。
 あいつあれで結構奥手……なんだな、と」
 いくみくん、て言うんだ。下の名前で呼ぶくらいだから本当に親しいんだろな。けど、それでも知らなかった友達の一面を
発見して『面白がってる』、ってのは間違いなく確かだ。――悪い意味では無く。
 でも奥手ってのはどうかと思うよ。
「……わかった。けど、やっぱりよく知らない人にあれこれ聞かれてもちょっと困る。用事があるなら自分から、って言っといて
 くれる?ごめんね」
「え………うん、わかった。そう言っとく」
 本当はもう、あまり関わりたくない。
 嫌な役回りさせるみたいで外山くんには悪いけど、とりあえずそっからでも悟ってくれれば。
「いこ、早紀」
「あ、うん。いーの?」
「何が?」
「口挟んどいて何だけど、気になったりしない?奴の考えてる事とか……あんたのことだし」
「……いいや別に」
 気にしたって仕方無い。――今更、私のファーストキスが戻るわけじゃなし。
「早くトイレ行こ。時間なくなる」
「あっホントだ、やばっ!――千代、ハンカチかして」
「いいよ〜」
 距離が少し進んだところで、ふと振り返ると、外山くんが軽く手を振ってきた。
 何となく振り返すと、また人なつこい笑顔を見せてから背中を向けて去っていった。
「なんであの人、あんなんと仲良いのかな?」
 早紀の言うことも確かに頷けるけど。
「ん〜……幼なじみって言ってたし、それなりに色々解ってるんじゃない?」
 私だって最初はそんなに嫌な感じしなかったんだから。


 思った通り、次の授業が始まるギリギリになって教室に駆け込む羽目になった。
 出席取ってる途中だったから、席の周りや入り口周辺の一部からとは言え注目浴びるあびる。
 その中には、痛いという程強く感じる誰かの視線があったと思うのは、私の思い上がりだろうか。


358 :6/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:55:37.14 ID:u5huaOGp
* * *

 雨、ちょっとやばいかな?
 昨日は結局降られる事はなかったけど、その分ずれ込まれたみたい。
 早紀と門を出た所で別れ、薄暗く泣き出しそうな空を見上げて、駅まで急ごうと駆け足になる。
 鞄に折りたたみ傘があったのを確認しにちょっと立ち止まったところで、ぱらぱらと足下に水玉が広がっていくのを見て、
脇の本屋の軒下に飛び込んだ。
「あ」
「……おっ」
 どちらともなく小さく零れた声に顔を見合わせ、その先が見つからず飲み込む。
 狭い入り口のスペースに先客があるとなっては、私としても居辛いわけで。
 用もないのにわざわざ店に入ると、適当にその辺にあった雑誌を手にとってみたりする。
 雨足は少しずつ強まってきて、表を行き来する人たちの動きも何だか忙しない。
 それなのに、こちらに背中を向けたままあいつは微動だにしない。
 早く帰りゃいいのに、と少しの間私も店内を意味なくぶらつく。

 暫くして運良く?欲しい本を手に入れ店を出ると、まだそこに居た。
「……帰らないの?」
「あ……友達待ってて」
「そう」
 思い切って声掛けてみたら、ちょっと驚いた様子。
 ――なんだ、帰れないのかと思った。
 私のと同じビニール袋を小脇に抱えて立ち尽くす、雨降りの軒下に。
「友達って、外山くん?」
「!……知ってんの?」
「まあね」
 あちゃ〜って小さく聞こえた。眉間にシワが寄って、細長い目がきゅっと鋭く見える。
「仲いいんだね。なんか色々、心配?とか、してたし?」
「ん〜、ああ、まあ」
 あれ?何だか耳まで赤くないですか?
 もしや触れてはいけない何かに触れてしまったわけじゃあるまいか、私。
「あの……」
「なにか」
「あいつ、なんか言った?」
「……知りたい?」
 ああ、まあ、とぶつぶつ呟きながら、本の袋をガサガサ言わせて俯き加減にこっちに目をやってくる。
 ふうん、気になるんだ。


359 :7/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:56:28.56 ID:u5huaOGp
「教えない」
 ずるっとスニーカーの滑る音がして、肩が斜めに下がった。人間ほんとにこけるんだな。漫画みたい。(※あ、本当に
ずるんっていったわけじゃないですよ。だって雨ですよ。例えですよ?大惨事じゃないですか)
「お……ちょっ」
「話したのは外山くんとだから」
「……」
 ちょっとイヤミだったかな。
 横目でそーっと見ると、険しい目で足下を見つめたまま動かない。
 怒ってる?ひええっ――恐っ!その目で睨まないでぇっ!!
 ……睨んでは来ない、か。
 よーく見ると、目つきは相変わらず鋭いけれど、微妙に眉毛がハの字な感じ?
 もしかして。
「……外山くんて面白いね」
 結構この人、ややこしいのかもしれない。
「ああいうの好みなんだ?」
「別に嫌いじゃないけど」
 とっつきにくそうな、何考えてるかわかんないような。
「でも、いきなり知らない人にメアドとか教えたりするのは抵抗あるんだ、私」
「へー……」
「でも、仲良くしてくれたら嬉しいかなと思う。自分からってそういうの、言いにくいし」
 そんなのって、自分だけだと思ってたんだよね。でも、そうでなくて、相手もそうだったりするんじゃないか、とか。
「……あんた、小松原さん、てさ、ケータイある?」
「……あるけど」

 だけど、それがどこまで本気なのかは、解らないから、少しだけ最後まで。

「……やっぱりいいわ」
「あっそう」

 ――迷いは、残る。

「じゃ、私行くね」
 ちょこっと頭を下げて見せた増田くんを残して本屋を後にした。
 すぐ背中で外山くんの賑やかな笑い声が軽い悲鳴のようなものに変わったのを聞いたけど、知らないフリして駅までを急いだ。
 私は何を期待していたのだろう。
 電車に飛び乗った後の軽い失望感に、それを気付かせられて首を振る。
 濡れた傘を見て、お礼だって入れてやっても良かったのかもと考えたけど。
「でも外山くんいたし」
 何がこんなに揺らぐのだろう。


360 :8/8  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/07(水) 17:57:35.03 ID:u5huaOGp
* * *

 次の日もその次の日も、ホームに滑り込んで来る電車の中に彼の姿を見た。
 そのたびに必ず窓から振り向き背中越しに外を見る目つきの悪さに一瞬びびり、さっさと隣の車両に駆け込むという日々。
 相も変わらずぎゅうぎゅうと押し合いへし合いする中で、自分の身をいかに守り抜くかを考えながら目的地に着く事だけを
頭に思い浮かべてやり過ごす。
 そうした中、連結の窓越しに俯く横顔が覗くのを何気に見つけて、暫くの間ぼーっと眺めた。
 こうしてまじまじと増田くんという人を見てみた事なんかなかった。いや、彼に限ったことじゃないけれど、誰かのことを
気にしたり、考え続けたりしたなんていままでにあまりない。
 あまり、というのは、私にはそうした経験が、まあ、皆無と言っても良いからなので、それはいわゆる――。
 いわゆ……る?
 あれ?なんか悪寒が。
 と同時にあり?熱が?
 妙な胸のもやもやを抱えつつ、目的地へ到着する。

 ぽん、と肩を叩かれて振り向くと、驚くほど至近距離であの目に射竦められ、改札に急ぐ人の波に逆らえず立ち止まる羽目に
なった。
「な、なにか?」
「あの、明日は――」
「あ、いたいたっ!」
 最後まで聞き取る事は出来ずに、彼の声も姿も割り込んできた甲高い声とサラサラの髪に遮られた。
 同じ駅利用の女子校の生徒が二、三人増田くんを囲んで何か言ってるようだけど、私には関係ない話、だから。
「小松原――さ――」

 途切れ途切れに呼ばれたような気がした私の名前に、一度だけ足を止めたけど。
「待っ……うわっ!?」
 すれ違った人にぶつかったのか、鞄が弾き飛ばされこっちまで滑ってきて仕方なく拾い上げる。
 飛び出た中身を何気に手にし、見なかった事にしてみて鞄に突っ込み無言で突っ返すと、後は振り向かず一気に走り出した。
 追っかけて来るなんて思いはしなかったけど、来るもの拒まずは本当なんだな――と、囲まれた女の子達に埋もれたままの
あいつを苦々しく思う。
 やっぱりああいうとこが最低なのかも、と。



――続く――


361 :名無しさん@ピンキー:2012/03/07(水) 23:39:15.30 ID:FxmDjcT8
初々しくていいね

362 :名無しさん@ピンキー:2012/03/11(日) 00:55:07.34 ID:MgVwv3+i
>>353-360
GJ!
続き気になる!

363 :名無しさん@ピンキー:2012/03/11(日) 11:33:16.06 ID:UmRZqvlj
まってるよー!GJ!

364 :純愛ぱるぷんて・3 1/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:32:15.27 ID:rBs+9UlF
* * *

 「何が最低ってさ、あんなもん学校持ってくる、ってのがさ、もー信じらんないよ!まじでっ」
 早紀の顔を見るなり今朝の鬱憤を晴らすかの如く、これまでになく畳み掛けるようにまくし立てる。
 鞄からぶちまけられた物は速攻押し込んで突っ返してやったけど、しっかりと脳裏に焼き付いてしまってどうしてくれようか、
とこんなものばかり記憶してしまう頭を恨めしく思うやら情けないやら。
 ああいう系DVD(おそらく)やら、やたら肌色の多かった破れた袋綴じのページが目立つ雑誌……。
 堅いシンプルなデザインの教科書に紛れてカラフルなデザインは異様に目立って見えた。
「誰かに貸すつもりだったとか」
「借りたもんかもしれないじゃん!」
 貸すつもりでも学校なんかに持ってくるな!ていうかそれだったらやっぱりそういう物を持っているというわけで、借りた
としたらそれを見……うわああぁ!
「来るもの拒まずだって、本当みたいだし、頭の中身そればっかみたい。本当にゲスなんだね」
「ゲ……まあ、でも男ってそんなもんみたいよ?」
「……早紀、あいつの味方してない?さっきからなんか引っかかるんだけど」
「え?そんなことないけど」
「そうかなー?なんかさ、ぼろくそ言ってたワリに今日はやけに物分かり良いような」
 昨日までの早紀なら絶対一緒になって顔しかめてると思うんだけど。
「……だってさぁ」
「だって?」
「あんた、本当に嫌ってる?」
「……!当たり前でしょうが」
「だったらゲス田が何しようが関係なくない?」
「なっ」
「あんたさ、本当に嫌な人間って関わらないんだよね?悪口言ったりするより、見ないようにするよね?」
「あ……」
 私は合わないと思ったら、黙って離れるようにしている。
 陰でこそこそやるのはあまり好きじゃないし、それは結局相手に関心があるという事になるから。


365 :2/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:33:20.68 ID:rBs+9UlF
 滅多にあるわけではないが、我慢して悪口を吐き出しそれが回り回って耳に入り互いに嫌な思いをすることになる位なら、
最初から関わらないようにするのが一番良いと思ったからだ。
「あんたも不器用なとこあるからね。内気なくせにお節介で、かと思うと強情だし」
 ぐっ、とつまる。そんなことないよと返したいところだが、早紀の妙に柔軟な正直さが私には無い魅力で真似できないのは
確かだから。だから逆らえない。
「だーから妬いちゃってるんだ?」
「はあ?妬く?」
「だって面白くなかったんでしょ。どうでもいい男がエロ本読もうが女に騒がれようが、それこそどうでも良くない?」
 むう、と何だかむくれた返事しか出来なくなって、それから今朝の一連の自分の行動や感情の流れを思い出してみるうちに、
一瞬だけ見たような気がするちょっと困った増田くんの顔が浮かんできて困った。
「そっ、それを言ったらば、さ、早紀だって、ていうか早紀のほうが案外、気になってんじゃないの?ほら、庇ってるのが
 バレたらやだから話逸らそうとして」
「ちがーう!私はどっちかってーとと……」
 段々とヒートアップして大きくなりつつあった声を、両手で口を塞いで押し込めた。
「……早紀」
「な………なによぉ」
「鼻息荒いよん」
 しまったーって書いてありますよ。触るとしゅうしゅう湯気があがりそう。
「……いつ?」
「昨日、あんたと別れてから。追っかけてきて、ケータイ聞かれて、夜掛かってきて……」
 早い。早いというより速すぎる。ていうかそのために昨日あそこで待たされてたのか、あの人。
「……先の事なんてさ、誰もわかんないんだよ」
 早紀の言葉に、この間までの平穏かつ退屈な自分の日常を頭の中に思い浮かべてみる。
 ここ数日、色んな事がありすぎて、何かがその分動き出している。
「ま、人の気持ちなんか一瞬で変わっちゃうって事なんだよね」
 とりあえず、話聞こうじゃない。
 今度は私が。


366 :3/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:34:27.85 ID:rBs+9UlF
 昼休みに今度は私が向こうを呼び出した。
「はいはい、聞きますよ。話しますよ」
「お願いします」
 よいしょ、と目の前でコンビニ袋からペットボトルを取り出し飲み始める彼を眺めつつ、自分もお弁当を広げる。
 屋上に二人っきり――なんてことはなく隣には早紀もいて、“彼”と私が言ったのは
「あの、ま、増田くん」
――ではなく。
「……とは仲良いの?外山くんて」
「うん。昨日も言ったけど幼なじみで」
 今日は私が外山くんを呼び出しだのだ。もちろん早紀にも付き合って貰って。
「家が近いからね。俺んとこ、小中学校ずっと一緒だから周りもそうなんだけど、特に育実は昔からよく知ってる。あいつの
 妹ともよく遊んでたくらいだから」
「ふーん。妹さんいるんだ」
「お姉ちゃんもいるよ、結婚して家出たけど。だから俺羨ましくてさ、男兄弟ばっかだから」
「三兄弟の長男だっけ?」
「そうなんだよね。潤いが無いっての?」
 良く知ってるね、早紀ちゃん。
 やっちまったな状態に気付かず二人ともすっとぼけてる様なので、私もそこは大人になって耳に栓をしておく事として、と。
「あのー、増田くんがさ、私に一体何がしたかったのか知ってる?」
「知ってるっちゃ知ってるけど、え、何、聞いてないの!?」
「だからわかんないんで外山くんに」
 何その反応。
「んだよあいつ。マジ駄目ダメじゃんか……何してんだ」
 ふわーっと大袈裟とも言える溜め息を吐いて頭をばりばり掻きだした。ごめんねーとか、あのバカがとか。いや、あのなにも
そんなに責めなくても。
「増田くんていつもああなの?」
「ああって?」
「なんかこう、話辛い……あ、えと、あんまりしゃべるの苦手なのかなって。女子と。男子とは普通に話してるよね?」
「え?あいつ女の子とも普通に話すよ。ほら女きょうだいに囲まれてて慣れてるし」
 ああ、そうだっけ。
「女の子にも囲まれてたわ、そう言えば」


367 :4/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:36:21.52 ID:rBs+9UlF
 思い出したらまた何かムカムカしてきた。
「ああ、育実は昔からあれで案外もてるから」
「そーみたいね」
「ほら、女の子って危険な男って好きだって言うじゃない?あいつ結構イケメンだし、あの鋭い目つきがカッコいいって思う
 娘がいるみたいでさあ、ほら、小松原さんとかもそういうの……」
「人によるんじゃない?」
「……あのさあ」
「なんでしょう」
「もしかして、面白くないとか思ってる?」
「!!……なにがっ?べ、別にっ。私には関係ないしー」
「そぼろになってるよ」

「……」
 いつの間にか荒くなった箸使いのため、弁当箱の卵焼きが姿を変えていた。
 外山くんまでそういう事を言うとは。
 それを見て早紀はさっきからお腹を抱えてひーひーと呼吸困難を起こしている。早く言え!
「小松原さんて端から見るとすっげー解りやすい人だったんだね。素直じゃないけど」
「なっ!?」
「でしょー?この娘はそこが面白いんだー」
 早紀……やっぱり私、耳栓を外すことにするよ。
「育実もそうなんだよ。あいつ変にもてるから、逆に女慣れっていうか女に対してスれちゃったんだよね。向こうもそういう
 慣れた娘が寄ってくるから」
「私も……スレてる?」
 もててもないし、男慣れもしてませんが。
「いやそーじゃなく!ごめん言い方悪かった。何つーか既に諦めモードみたくなってんのよ。あいつ中身は大してワルでもクール
 でもないし、勝手にそういうの期待して近付いて来ては、つまんないって去ってかれる。……ま、たまたまそういう女の子
 ばかりに当たって運が悪かったんだろうけど、それが続いたから半分やけっぱちっての?女はみんな同じと思ってんだよね」
「それこそ、一括りにされたら迷惑」
 拒まずという割には好きじゃないのか、女の子。
「だよね。だから小松原さんは違うと思ったみたいなんだよ」
「へ?なんで私?」

「ちょ、ここまで鈍いとは……わざとじゃないよね?」
「あ、この子天然」
 すかさず突っ込んでくる早紀の天然発言になるほどなーと頷いてみせる外山くん。
 な、なによう。
 なんか二人だけでわかってるみたいな雰囲気ずるい。


368 :5/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:37:43.74 ID:rBs+9UlF
「とにかくさ、あいつ寄って来られるのはあってもその逆ってなくて」
「来るものは拒まずって聞いたけど?」
「それは……でもかなりダメージ喰らってるみたいなんだよね」
「……そのわりに『痴漢ビデオ』とか……(ボソッ)」
「そっ!……ああ、それはまあ、仕方ないっつーか何というか」
 凄い。一気に夏が来たみたい。
「早紀、外山くんにハンカチ貸したげたら?」
「ちょ、なんでわたっ」
「……小松原さんてツンデレぽいかと思ったら結構Sっスね」
 そうなの?初めて言われた。早紀の顔見たら「うんうん」って、おい。
「あいつ、本当は妹想いだったりいい奴で、見た目ああだから誤解されやすい上に、女関係で捻くれちゃって。だから小松原さん
 みたいな娘がビシッとシメてくれたら俺としても安心なんだよね」
 そんな事勝手に期待されても。
 困る、私困る。
 だってなにも解ってないのに。
 増田くんの気持ちだって知らないし、何より私、自分がわからない。
「もし今度あいつが何か言いたそうにしてたら、小松原さんからそれとなく相手してやってくれない?」
「なんで私が。そんなの自分で――」
 はっと胸を突かれて言葉を呑んだ。
 私だって今、外山くんを相手にここに居ない増田くんと話をしてるようなものだ。
 直接聞けば、確かめれば良いようなものを、わざわざ本人ではない誰かから引き出しておいて、それを知ったような気に
なろうとしてる。
 それは、ほら、関わりたくないし。
 ――なら、放っておけばいいだけなのに。
 そういう性格だから、仕方ないから、では説明がつかない。とことん嫌いであろうとするなら、それこそとことん排除する。
それが私だった筈だから。
「そういえば……外山くんて電車乗ってないの?」
「うん。俺は学校近くに従兄弟んちがあるから下宿。男ばっかなんだそこも。――そういえば、小松原さんてあいつのお姉ちゃん
 に似てるかも」
「えっ!?」
 まさかシスコン?
「容赦ないツッコミ具合が」
 どんな人だろう。
「なにそれ……別にいいけど。それより……」
 関わりついでにお願いをして、残りの休み時間を無駄話に費やした。


369 :6/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:38:52.17 ID:rBs+9UlF
* * *

 いつもの時間、いつもの電車。
 でも乗り込むのは隣の車両だ。
 なんとか人を掻き分けて、目的の位置へと身体をねじ込む。皆様ごめんなさい。
「……お、おはよう」
「う、うん」
 ためらいがちに見下ろしながら挨拶すると、向こうも少し照れ臭げに頷いて目線を上げる。
 窓越しに見つけた顔は、昨日と同じ様に細長い目で私を射抜いた。と同時に少しだけ口角を上げたのを私は見逃さなかった。
 気のせいだったら、それは仕方がないことだけど、これまた細めの整えられた眉が言葉を交わした瞬間に心持ち緩んだ。
 だから多分それは間違いではない筈。
「本当に乗っかってきた」
「約束したから」
 外山くんとだけどね。
 ガタゴトと激しくなる音と揺れに、身体ががくんっと揺れて前につんのめった。
「ひゃっ!ご、ごめ」
 伸ばした腕と放り出した鞄は増田くんの膝に落ちる。
「だ、大丈夫?」
「いや、いい」
 間近で見た顔はやはり痛かった(重かった?)のだろうか、しかめっ面で、事情を知らなかったらちょっと怖かったかも。
 じっくり眺めてる暇などあるわけもなく、慌てて身体を起こして吊革を探ろうと伸ばした腕をぐいと掴まれた。
「こっち」
「えっ!?」
「いいから」
 あっという間に立ち上がり、私と自分の位置を入れ替えてしまった。
 驚いたのは私ばかりではない。周りも何事かと目を丸くする。そりゃそうか、別に具合が悪そうというわけでなし、この混雑時
にわざわざ他人に席を譲るなんて奇特な真似をすれば目立ってしまうのも尤もだと思う。
「増田くん……か、鞄もつよ」
「あ、うん」
 だからと言って今更立つこともできず、二人分の鞄を膝に乗せて到着までの多少気まずい時間を過ごすこととなってしまった。


370 :7/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:39:45.55 ID:rBs+9UlF
 駅に着いてから鞄を渡し、そのまま何となく並んで通学路を歩く。
「あのー」
「うん」
「ああいうのちょっと困る。……あ、楽だし嬉しいんだけど、みんな見るし、混んでると迷惑かかる……かなって」
「あっ」
 小さく呟いて俯いたあと、ごめんって聞こえた。
「ううん、せっかく気つかってくれたのに、悪いんだけど」
「……て」
「えっ?」
「座れりゃ安全かな、とか思って」
 揺れにこけかけた今朝の自分の格好を思い出してはっとした。
「ます……」
「実際は想像通りにはいかないもんだよな」
 はあ?と突然わけのわからない事を言い出すのでこちらはお礼を言いそびれた。
「知らない野郎に何ぞされりゃキモイだけなんだな、やっぱ」
 えーっと、それは。
 やけに肌色の多かったパッケージのタイトルを思い出して、みるみるうちに頭に血が昇っていくのがわかった。
「あ、あんたねっ……!」
「えらく縮こまって、下手すりゃ泣きそうだったから、やっぱり放っておくのは忍びなくてさ」
 ってことはあれ?もしかして、場合によってはあれを楽しむ方向にいってたかもしれないってか?傍観するだけならまだしも、
「さいってー……」
リアルでそんな事ありえるか、バカ!!
「わかってるよ。まあ、んなもん観ちまった後だからつっても、実際酷いと思ったし。犯人はよくわかんなかったけど、現実は
 あんなん有り得ないってよーくわかった」
「だからって言って良いことが」
「それも、気をつけるし。そういうの隠すのも何か面倒だったからゲス野郎よばわりされんのも知ってて開き直って。けど、
 さすがに堪えた」
 知ってたのか。わかっててその上でそれをあえてやって見せてたわけだこの人は。
「だから……明日もできれば」
 学校が見えてきて、見慣れた顔もちらほら追い抜いたり追い越されたり、中にはあれ?なんて顔して見て行った者もいる。
「俺に守らせて欲しい」
 人間、嘘を見抜くなら目を見ろとよく言う。だけど、長めの前髪に被された彼の細い目はよく見えなくて、かわりに赤くなった
耳たぶに委ねることにする。


371 :8/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:40:43.47 ID:rBs+9UlF
* * *

 約束したわけじゃなかったけど、前日と同じ様に隣の車両の窓に増田くんの姿を探してみた。
 いない。
 休んだのかもしれない。
 もしかして遅刻したのか。
 連絡とる事だってできない。だって知らないもん。
 迷ってる暇などあるわけもなく、仕方無くそこから電車に乗りこむ。
「……あ」
 うまく滑り込んで反対側の手すりに掴まりほっとしたところで、乗客の間を縫うようにしてすり抜けてくる姿がある。
「よくわかったね」
「まあ。乗るとこ見えたから」
「今日は座らなかったんだ」
「うん」
「もったいない」
 せっかく空いてる駅から乗れるのに。
「昨日……約束したし。一方的だけど」
 手すりを握った私の手のすぐ上の部分を持った増田くんのまっすぐだった腕が、ぐらりと揺れた拍子に緩んで曲がって、その
分だけ向かい合った身体の距離がぐっと縮まった。
「あ、悪い」
「ううん。だ、大丈夫。混んでるし」
「……この方がちゃんと見張れるから」
 本気、だったんだ。守る、ってこういう事?
「俺より変態のほうがましだってんなら別だけど」
「んなわけないし」
「お陰であれ、嘘臭さが先にきて全然楽しめねーの」
 知るか!そんなの。AVなんか所詮は作り物でしょうが。……観たことないけど。
「あんたがもし目の前でまたあんな目に遭ったらかなりキツいわ、俺」
 実際キツいのは私の方だと言い返してやろうと思った。だけど次の停車時の揺れに傾いた身体を受け止めるように支えてくれた
胸板の思わぬ硬さと広さにそんな言い返しさえ飲み込んでしまう。なに、これ。
「そのままでいなよ」
 うっかり掴んでしまった彼の胸元の手を離すなと言われた。手すりから離してしまった手はどのみち行き場がなくて、それに
甘えておく事にする。
「俺のここは空けとくことにしたから」
「なにそれ」
 どこかの漫才師のセリフか。
「……誰でも良いわけじゃなかったんだ」
 どうしよう。聞こえないふりしたってよかったのに。
「――あんたのメアド聞いていい?」
 私、うまく嘘はつけないみたい。
「ここ、空けといてくれるならね」


372 :9/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:41:41.56 ID:rBs+9UlF
* * *

「小松原さん、一つ聞いていい?」
 普段はあまり絡む事のない仕切り屋の女子に肩を叩かれる。
「二つまでなら」
「増田とデキてる?」
 数秒の沈黙の後、女子更衣室はあちこちで二種類の悲鳴があがった。
「うっわー!やられたっ」
「ふふん。帰りよろしく」
「あたしバナナチョコね」
 どうやらクラスの女子達が、学校前のクレープ屋の奢りを賭けの商品にしていたらしい。
「ね、もう一つ良い?」
「え?まだあるの」
「……どこまで行って……ちょ!二つまでって言ったじゃない」
「はいはい、こっから先はプライベート。質問のある人は私を通して〜」
「けちっ」
 無遠慮とも言える切り込みを早紀が素早く制した。助かったけど、あなた私のマネージャーでしたか。
 それにしても、いっつも私が口挟む間もなく事が進むなあ……もう慣れたけど。
「いいよもう、本人に聞くからっ!……て聞くまでもないか」
 私を上から下まで眺めておいてつまらなそうに言う。
「色気づいた跡がなさすぎる……」
 し、失敬な。
「なに、何なの?」
「だってうそ……まさかヤっちゃった!?」
 まさかって?――まさかっ!!
 さっきは縦に振った首を横に振る。
「えー、それこそまさかでしょ!?」
「なんで」
「だって、あのゲス田が手出さないわけないじゃん!!」
 数人がウンウンと頷く中、早紀が耳元で
「ほら、あいつヤリなんとかだって言ってたから」
と囁いてくる。
 そうか、そういえばそうだったっけ。
 でも、私あの事故以来キスどころか、手さえまだ握られてない。
「人の噂なんかアテになんないんだね」
 誰かがそう言うと、なーんだって言いながら皆つまらなそうにバラけて着替えに戻る。何よ、今までラグビーのスクラム状態
だったくせに。ていうか面白いのかしら、人の心配するより自分の……。
 あ、これ以上はやめておこう。なんかやな奴みたいだ私。


373 :10/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:42:28.50 ID:rBs+9UlF
 彼氏が出来るってこういう事なのか。何だか急に周りがよそよそしくなった感じがするんだけど。
 もしかして態度が悪くなったとか、本当に嫌な性格になっちゃったのかな、私。

「あんた本気で言ってる?」
 授業が終わってさあ帰ろうと靴を履きかけて振り返ると、早紀が呆れ顔で腕組みしていた。
「だって、最近男子が話しかけてくれなくなった気がするんだよね。呼び止められても何か言いかけてやめちゃうし、ねえ、
 私って話しかけ辛い?」
「う〜ん。まあ、話し辛いっちゃあ話し辛い、かな?……特に今は鉄壁の守りがついてるから」
「え〜早紀のこと?最近はあんまり居てくれないじゃん」
「……あのねえ……っとに天然ちゃんの鈍感なんだよね、こういう所がブツブツ」
「何か言った?」
 言ってる意味が良くわかんないんだけど。
「増田に同情するよ」
「え?何でよ!」
 近頃あれだけ嫌ってた筈の増田くんに対してかなり態度が軟化したらしい。というよりむしろ味方っぽい。外山くんの影響か?
 言ってる間に一緒に居てくれない原因が来たよ。
「あ、小松原さんいたんだ」
 いたんだ、って。悪かったわねえ。あー早紀の事しか見えてないんだろうな。早紀は早紀であらこんにちはーとか言いつつ
お顔がトマトですよ。
「なによ」
「べっつにぃ〜。……あ、早紀ってドラ○もん好きだよね。後くまの○ーさんとか」
 こっそり耳打ちしてやったら、どーゆー意味だってこっそり足踏まれました。酷い。
「小松……あれっ?お前いたんだ」
 後ろから見覚えのある顔がぬーっと出てきた。
「外山くんならずっといたじゃない。何言ってんの」
「あんた探してたから」
 そうあっさりと言い切られても。な、何よう……何で私が焦らなきゃなんないのよう。 
 呆気に取られる丸い人とクールビューティーを残して、私の彼氏という人はその場からさっさと私を連れ去ってしまう。
 ていうか、手、手!
「……なんか、あんたしか目に入らんくなった」
 冗談なのか本気なのか。わからないまま握られ引かれる手が汗ばんでいく。


374 :11/11  ◆jj9fnfoR3g :2012/03/14(水) 17:45:30.27 ID:rBs+9UlF
「あの、あんたあんたって言うのなんか気になるんだけど。私にも名前があるんだし。私は増田くんて呼んでるでしょ?」
 いきなり親密になったってわけでもないど、苗字で呼ばれてた時より他人行儀だなあと感じる事がある。
「えっ、俺そう呼んでる?」
「うん」
「そうか……うっかりお前呼ばわりするよりマシかと思ったんだけど。あん……小松原さんそう言うの煩そうだし」
「えっ、そうかなあ」
「うん、怒られそう」
 酷いなあ。私はそこまで怖くないと思うけど。失礼だな。
「下の名前は?」
「う……いいけど。私教えたっけ」
「友達が呼んでるの聞いた。嫌そうだな」
「だって古臭いし、堅そうじゃない?」
「似合ってると思ってるんだけど。あ、褒めてるから」
「……ありがと」
 話しながら歩いていたら、いつの間にか校舎裏の自販機前に来ていた。
 のどが渇いたからと増田くんがジュースを一つ買って、その後また百円玉を入れた。
 買ってくれるというので、せっかくだからとボタンに手を伸ばす。
「……代」
「えっ?」
 聞き取れなかった呼びかけに振り向きかけて、伸ばした指先はそのままに、中途半端に捻れた身体を抱き寄せられるように
引っ張られる。
 その衝撃に思わず目を瞑ると、暗くなった視界と同時に一度味わった事のある感触が一瞬にして蘇った。
 ああ、こんなふうだったのか。
 あの時は全く余裕なく味わうことの出来なかったそれを、ゆっくり受け止める。
 ゴトンと紙パックの落ちる音が頭の隅に響くも、閉ざされた視界の中では唇に移る柔らかく甘いコーヒーの味と匂い、腰に
ある彼の手の温もり。
「やり直し」
 言われて頬が熱くなる。
 壁にもたれ横並びに身体をくっつけて、後の気まずさを誤魔化すようパックを口にした。
「よりによって牛乳は……マズいだろ」
「んん?牛乳嫌い?」
「じゃなく……んじゃ、口の端から垂らしてみ」
「……ヤだ」
 却下した私は多分正しかった。
 誰かさんが言うように私がシメるしかないのだろうか。――この男なんとかしないと。


――続く――

※あと1話で終了


375 :名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 22:06:04.96 ID:fVSvky4a
かわいいー

376 :名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 01:14:37.30 ID:31NJzWgy
イイよイイよ〜

377 :純愛ぱるぷんて(終)・1/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:21:05.65 ID:8kwWndhK
* * *

 たまたまその日は一人で電車に乗った。
 寝坊したから一本遅れるとメールを貰ったので、先に改札を出て待つ事にした。
 コンビニの前で立っていると、他校の女子が数人こちらを遠巻きに見てこそこそとやっている。なんか気分悪いなあと知らん
ぷりして携帯を見るふりをしていたら、あっという間にその娘達に囲まれてしまった。
「ねえ、あんたS高の増田の今のカノジョ?」
「……何か?」
 上からともいえる無遠慮な物言いに少しカチンときたけど、こちらは一人。分が悪いし関わりたくない。
 ふーん、と値踏みをするような目つきで上から下まで視線を往復させると
「意味わかんない」
と吐き捨てるように言って駅を出て行った。
『今の』がやたら強調されていたことにかなり動揺しているらしい。
 胸のあたりがきゅうっとなった気がして、なんとなくそこを押さえてみる。
 こんな事して楽になれるわけなんてないのに。

 数分後、改札の向こうに増田くんの姿が見えた。
「ごめん。間に合う?」
「速歩きすれば大丈夫」
 少し寝癖の残る頭を気にしながら触る顎に、見慣れないものが見える。
「ヒゲ剃ってる暇なかった」
「えっ!?」
「そんな驚く事かよ」
 もっと大人になってからだと思ってた。
「だらしないのは、嫌かな……やっぱり」
「仕方ないよ。時間無かったんでしょ」
「女にだらしないのはやめたから勘弁して――あ、3分だけ待って、パン買う」
 休み時間に食べる朝食を買いにコンビニに入る。
 来るもの拒まずの男だ。さっきの女の子達だってそう思ったから近づいてきたのかもしれない。
 だけどそうはいかなかった。思惑通りにならなかったからこそ、私にあのような言葉を浴びせていったのだろう。
 私が気に病む事など無いのだ。
「これ払ってきてくれる?」
「え、自分で払いなよ」
 千円札と一緒に商品を数点渡される。
「これ何?お菓子?」
「ゴ……」
 無言でそれらを押し付け店を出てやる。
「恥じらう千代に買わせるのがいいのに」
 知るか!エロゲス。


378 :2/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:21:58.73 ID:8kwWndhK
* * *

 そういえばデートなどというものをまだしていない。
 学校の行き帰りを一緒にするのみで、どこか満足していた私と違い、向こうはそれが不満らしかった。
 早紀には呆れられ、
「そりゃそうでしょうよ。増田可哀想」
とまで言われた。曰く、これまで来る者拒まずで自然と不自由する事の無かった男にとってはそりゃあ苦痛だろうとまで。
 変われば変わるもんだ、あれだけ嫌ってた筈の人間に対して。
 それは彼氏(今の所お友達から状態らしいけど、時間の問題だと思っている)の友人であるからというだけでなく、親友である
私を見てるとわかるのだそうだ。
「明日の事なんて何が起こるかわからないじゃない?まして人の心なんて尚更。――ああ、好きだなあ、って自然にでしょ?
 なろうと頑張ってそうなるもんじゃないじゃない」
 目から鱗、ってこの事かしら。
 頭で感じるものではなく、心に素直に湧き出る気持ちが、きっと自分自身の従うべきものなのだろうと思う。


「家にでも来る?」

 特に悩むこともなく、週末の予定が決まった。
 特に行きたい場所もあるわけじゃなし。海とか行けなくもない距離ではあるんだけど、そんな気分でもない。
 何よりも少しの好奇心が後押しをした。男の子の家なんてそうそう行ける機会はないから。
 初めての駅で降り立ってからきょろきょろしてたら、前からやたら目つきの悪い恐いお兄さんがやってきた。他人のフリ、
というわけにもいかず片手を上げて応える。
「ちょっと風邪ひいたかもしんね」
「大丈夫?」
 大きなマスクで隠れた顔から細い目が長い前髪からちらちらと覗く様は、お世辞にも良い人相とは言い難い。
「さっき中学の同級生に会って、放火魔か切り裂き魔みたいってゆわれた」
 そうねーともそんなーとも反応し難い事を言われて、愛想笑いを浮かべながらバスに乗り込んだ。
「おう、増田んちの育坊か。なんだバスジャックか」
 田舎町ののどかな風景と言って良いのだろうか。運転手のおじさんの挨拶ギャグはどうも日常茶飯事らしい。


379 :3/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:22:56.40 ID:8kwWndhK
* * *

「おじゃましまーす」
 誰にともなく玄関で声を出しつつ靴を脱ぐ。
「気遣わなくていい。留守だし」
 そう、と言ってから、一瞬ほっとするものの、すぐに別の緊張がやってくる。
 ここまで来て『じゃあまたの機会に』ってのも変だし。
「怖じ気づいた?」
「誰がっ」
 そもそも何を考えてそんな発言をするのか。下手に家族がいて挨拶やら何やらで神経をすり減らすより全然楽じゃないか。
 増田くんの後に付いて階段を昇ろうとしたところで脇の襖が開いた。
「うわっ!……あれ、お兄ちゃんか」
「なんだお前まだ居たのかよ」
「今から出んの!あ、もしかして彼女さん?」
「こ、こんにちは」
 ふ〜ん、と私を確かめるように見るが、その目つきはこの前の女の子達とは明らかに違った。前者はどこか挑戦的な値踏みに
相応しい不快な何かを醸し出していたが、きらきらと澱みの無い素直なそれは逆にこちらがたじろいでしまいそうな程だ。
「やればできんじゃん」
 ぽーんと兄の背中を叩き、
「ふつつかな兄ですが。どうぞごゆっくり〜」
と賑やかに妹は去っていく。
「いてえなあいつ。後で覚えとけよ」
 玄関を睨みながら顎で階段へと再び促される。
「妹さんいくつ?可愛いね」
「うるさいだけだ。今中3」
 二階の奥の部屋に通されると、勧められるまま床に落ち着く。
「ケーキ買ってきた。うちの近所のだけど一応何種類か選んできたから、後で妹さんにも」
 一応数種類あるのだが、うまく好みに合うだろうか。
「成実(なるみ)の……あ、妹なんだけど。あんなのに勿体無い」
 そう言いつつも私達が二人で食べる分を確保している時、選んだケーキのうち一つを余分に持ってきたらしい皿に移していた。
 その間にペットボトルの飲み物をコップに移してから一息ついて、何気に部屋のあちこちに目をやってみる。


380 :4/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:24:04.19 ID:8kwWndhK
 本箱の隅に見覚えのある小箱があったのを見つけ、何とはなしに手に取ってみる。
「!――あ、それはっ」
「……なに、これ」
 私の記憶が正しければ、これは先日私にレジに持っていかせようとしたのと同じ物だ。ていうか多分あれだ。
 今更だけど、男の部屋に入るというのは、既に色々なあれこれを了承しているといった事に当たるのだろうか。
「そんなんじゃないけど」
 私の手にあるそれを一旦取り上げたものの、思い直したようにまたゆっくり手のひらに乗せられる。
「中身見てみる?」
「ばっ――まさかっ!!」
 ほんの一片でも頭の中にその考えが無かったなどとは正直言い難い。けれどはっきりと言われてしまうと、素知らぬ顔して
押し込めておいた下心を見透かされてしまった恥ずかしさをうまくあしらう事ができない。
「俺のこと言えないじゃん」
「一緒にしないで!」
 投げつけてやろうと振り上げた手を掴まれ、引き寄せられるとあっと言う間もなく互いの距離が無くなっていた。
 制服のカッターシャツとは違う、頬に当たるTシャツの感触と柔らかさに眩暈がした。
 いつもの日常とはまた違う時間にいるのだという違和感と新鮮な気持ちに、もう少し身を委ねても良いとまで思えてしまう。
 何も聞かずに唇を塞ぎ、体重を掛けてくる彼を押し戻すことも忘れた。
 背中に敷いてあったラグのごわつきを感じても、吐息混じりに被せられる唇の暖かさを受けるのに夢中になっていった。
「風邪移さないようしなきゃな……」
 呟きとは裏腹に、指先は私のチュニックの裾を摘んで捲ろうと動く。
「ちょっ、言ってる事とやってるこ……」
 さっきよりも体重が掛けられたせいか、合わすというよりも塞ぐと言った方がしっくりくるような、力の籠もる重たいキス
をされた。
 コトンと小さく床に転がる小箱を横目で見て、すぐ視線を私の上下する胸の膨らみに落とす。
 それを覆う布地の下にするりと手を滑り込ませ、ごそごそと形を確かめるように手のひららしき温もりが、中に着込んだキャミ
のカップを包み込んでいるのがわかる。


381 :5/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:25:04.23 ID:8kwWndhK
 ブラ部分のカップを軽く引き下げた感触と同じくして、胸の先辺りを擦り当てられ身を縮めて目を瞑った。
「正解?」
 やだって横を向いてみても、小刻みに転がされる乳首のピリピリとした妙な刺激に、呑み込んだ声とも溜め息ともつかない
喉の奥から来る何かを必死にごくりとする。
「そういう顔するから、シたくなるんだって」
 恐る恐る上を見ると、細い目を吊り上げて意地悪く薄笑いを浮かべた。
 ごそごそと盛り上がって形を変える服の中身で何をしてるのか、服を着てるのに、目に出来ない動きが弄られる胸に感じて
るせいで自分が凄くイラヤシイと思えてしまう。
 動きを止めて裾から出てきた手が、ほっと息をついた間に今度はスカートの裾から引っ張り出したキャミを強引に捲り上げ
ると、胸の引っ掛かりからカップを持ち上げる。
 首の下まで押し上げられたしわくちゃになったキャミの下は、どんななのかは容易に想像がつく。
 不意に、ニヤリと不適な笑みを浮かべた。
「なに?……なによ……」
「え?なにが?なんもないけど」
 嘘だ。ほんの一瞬ではあったが、口角が上がったのを見逃しはしなかった。
「こんな時に……余裕だな」
 剥き出しになった胸に直に下りてきた手が、包み込むようにゆっくりと膨らみを揉み始める。
「ちがっ……!そんっ」
 こんな時だからこそ、増田くんの気持ちや考えが知りたくて、少しの動きにも反応してしまうのだと思う。
 初めは片方だけだったのが、身体を支えていた方の腕を空いてるほうの胸にまわし、一度に両胸を撫で回す。
 そのためか、さっきより彼の重みを強く感じる。

 思い切って私も腕を伸ばして、そっと首から肩に向けて触れてみる。
 ――不安、なんだもの。
 胸に向けられていた目がこっちに向いてきて閉じられ、今日だけで何回目かのキスをした。
 決して不真面目とは思えない言動でさっきから身体を求めているのだけはわかるけど、私がどのように映されているのかまでは
理解できないから。


382 :6/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:26:02.50 ID:8kwWndhK
 何回かキスするうちに、段々息苦しくなってきた。
 数本の指で摘み擦られる胸の痺れるような気持ち良さが襲ってきて、どっちにも集中できずに呼吸だけが荒くなる。
「――んっ!?」
 塞がれた唇から洩れ損ねて鼻先から抜ける声が予想外に甲高くて、一瞬だけ我に返った。
「いや……あのっ――んぁっ!」
 強く押された胸の中心を小刻みにつつかれる。
「いい声出すじゃん」
 やっと唇を離したかと思えば、そんな。
 膝の間に割り入ってきた身体が再びのしかかってきて、両手を顔の両側にそれぞれ押さえつけられる。
 何してんだろう、私は。
「い……や」
 首から下はまともに見られるような状態ではなかったが、見られたとしても直視はできない、したくないような格好で、初めて
来た、それも人の部屋で、はしたない声をあげている。
 首筋に軽く息を吹きかけながら
「嘘つき」
と低い声が責めてくる。
「だっ……あの。ほら、いきなりだし」
「ダメなの?」
 そう訊いておきながら、またすぐ唇を塞ぐ。
 返事聞く気なんかないじゃない。
 目を開けると見下ろしてくる顔がある。その瞳に映ってるのは紛れもなく今の私で。
「……きなんだけど」
「は?」
「なんかすっごい好きなんだけど」
 だから。
「だからする……の?」
「うん」
「や……だって言ったら?」
「……俺の事、好き?」
「うん」
「えらく簡単に言うな」
「だって本当だし」
「じゃ、なんで嫌がんの」
「恥ずかしいもん」
「……」
 しなきゃ、信じてもらえないのかな?
 ゆっくりと倒れ込むように身体を重ねてきて、首筋に再び顔を埋めてくると、ふっと息を吐く音がして、同時に広い肩幅が
上下に揺れた。
「そんだけ?」
「?……ん、まあ、そう」
 後はまだ早いよとか、やっぱり怖いよ――とか色々無いこともないんだけれど、ね。
「なら全然大丈夫だな」
 鼻先を突き合わせて来ながら、不敵な笑みをまた浮かべる。


383 :7/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:26:55.19 ID:8kwWndhK
「どうせすぐ関係なくなるし」
「ちょっ――あっ!?」
 急に視界から消えた、と思ったら、彼の頭は私の胸の位置に。
 さっきは指先で弄んでいたそこを今度は唇で軽く挟み、時折なにか動く――多分舌で――。
「っや……やぁ……」
 なま暖かい濡れた柔らかさが包み込んでは転がし、つつき、吸い上げられて疼く。
 背中が軽く仰け反って震えた拍子に両手首が自由になった。
 その手は自分を押さえつける塊を跳ね除ける事はなく、夢中になって身体を貪るその頭に抱き締めるよう乗せる。
 整髪料の香りと、それのせいか少しごわごわとした黒い髪の毛が軽く肌に刺さるように擦れるのが、なんだか変な感じ。
 反対側の胸先へと唇を移し替えて、片方の手はスカートを捲り上げ、太ももをさすり出す。
 ショーツのゴムを指で引っ掛け浮かす。
「尻あげて」
「あ……うん……え?――やだ、や、ちょっと、だめっ!」
 いくら何でもそれは、それは。
「何で。脱がなきゃ」
「だってそんな事したら……」
「したら?」
 そんな事聞く!?
「じゃあこのままでもいいけど、困るのはそっちだと思う」
「困るってな……」
 おへその上に置いた手を、するっと下着の中へと滑り込ませる。
「いやっ!――やっ」
 そんな所を何の躊躇いもなく触ろうとするなんて!!
 脚を閉じて抵抗しようと思ったら、それより先に彼の曲げた膝の押し戻す力が強くて間に合わない。
 何本かの指がアノ辺りを探っては耳を覆いたくなるような湿った音を立て始めた。
 同時にまた胸に顔を埋め、さっきのように吸いついてくる。
 指先がすーっと這って、何かを探し当てた。
「――っぁあっ――」
 触れた瞬間、腰が抜けたかと思うような衝撃が走る。喉の奥から今まで出した事のないであろう声が、意思とは無関係に押し
出される。
「んっ!いや、いやぁ、やぁぁンッ」
 胸とあそこと一度に弄られ、もうわけがわからない。


384 :8/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:27:53.82 ID:8kwWndhK
「嫌だって言ってるくせに」
「なにっ……ぁ――!?」
 じわりと身体の奥から何かが溢れ出すのがわかった。
「濡れてんだよ」
 ほら、と指を下着から抜き出し、目の前に翳される。
「だから嘘つきだっつってんの」
 耳元で息を吹きかけながら、またその指を私のそこに戻す。
「どうする?このままじゃ濡れたパンツ穿いて帰んなきゃだけど。それとも」
 意地悪く見下ろしながら、口元に薄く笑みを浮かべた。
「いっそ穿かずに帰る?」
 ゆっくりと指で押し開くようにそこを探り、再びぬるぬる動き出す。
 どこをつつかれれば気持ち良いのか、さっきので解ってしまった私の身体からの要求が、力の抜けたほぼ無抵抗になった開きっ
ぱなしの両脚の中心に熱をもって流れ出ている。
「んな事できないっ」
「させねえって」
 もう一度言われる。
「だからお尻をあげて下さい」
「……丁寧に言われても」
「俺以外に見られていいんだ?これじゃあのAVみたく……いでっ!」
「ばか!やだもうっ!!」
 こんな時に何を思い出すんだ。
 下着に掛かる手をぱちんと叩いてはねのけた。それから、キャミを直そうとしてその手を握られる。
「冗談。ごめんって」
「デリカシー無さ過ぎ」
 本当どうなの?そういうトコ。明け透けというよりやっぱゲスい!
「でも俺男だし」
「知ってる」
「頭の中はそういうもんよ?」
「そうかもしれないけど……」
「今だってもう、何つうか、限界なんだけど」
「はい?」
 そういうゲ……増田くんの視線を辿ると、私の全身を、それこそな……舐め回……すというか。
「いやあぁぁっ!?」
 捲り上げられたチュニックとブラトップを直そうと暴れて、その手は頭の上に押さえられる。
「今更何言ってんの?」
「だってこんな、みっともな……」
「今までアンアン言ってたくせに」
「っく……」
 さっきより少し乱暴に下着の中に手がねじ込まれる。
「身体は正直なんだよ?」
「……ぁ」
 湿りを帯びた指が容赦なく攻めてきて、どくどくと全身の血が駆け巡る。つま先や背中まで不思議な痺れが伝わってくる。


385 :9/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:28:55.00 ID:8kwWndhK
「見る?」
 そう言って私を押さえていた手を離した。
 強い快感から解放され半ば朦朧としながら目をやると、ジーパンのファスナーを下ろしている。
 あの手が今私の両腕を動けなくする程の力を出すのだ。それも自分では細いと自慢するには気が引ける両の手首を一度に、
片手で。
 あの指が、私の――。
 ――あ、また、じゅ、って。
 やっぱり、マズいかも。
「これ」
 それだけ言って、私の右手を盛り上がったボクサーへと導いた。
「硬いだろ?」
「うん」
「普段はやわらけーの。でも、今はこんな」
「へ、へぇー」
 知らんがな!平静を装ってるけど、心の中はバクバク色んな何かが大騒ぎを起こしてる。だってどうすりゃいいわけ!?
「だから身体は正直だってわけ」
「は?」
「嫌よ嫌よもとか言うじゃん?」
「な!何よそれー!!」
 言う?そういうこと言う?
「エッ……エロいの観すぎなんじゃないのっ!?」
「いや、最近飽きた」
 もーやだー……。
「そうは言ってもここはこんなだし」
 私に自分のを触れさせたまま身体を沈めてショーツの上から縦に指を滑らせる。
「嫌なんて言いながら、何でこんなに濡れ」
「言わないで!」
 その引っかかる感じから見なくてもわかる。ていうか意地悪い?このひと。
「勃ってる」
「見ればわかるよ」
「違う、そうじゃなくて。……おっぱい」
「えっ……あ」
 見慣れてる筈のふくらみの上にあるぽっちが、ぴんとまあるく硬くなって乗っていた。
 それをぱくっとくわえてちろちろと舐め始めた。
 ――あ、気持ち、イイ。
 最初より転がされる感じがはっきりとして、それがじんわりと下半身にまで広がっていく。
 私が声を洩らす度に、彼のそれがピクピク震えて、熱く、布地の下でぬめりを帯びて湿ってゆくのが指の腹に伝わってくる。
「……ねがい」
「ん?」
 ゆっくり口を開けてくわえていたモノを離して顔を上げる。
「やっぱり……脱がせて」
 言っておいて恥ずかしくて顔を背けた。


386 :10/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:30:28.83 ID:8kwWndhK
 素直にお尻を浮かせてショーツを脱がせて貰うと、ベッドに掛けてあったスポーツタオルを下に敷かれた。
「あ、もう我慢できない。俺、まじ無理」
 脱がしきらないでふくらはぎに白い布を引っかからせたまま、腕を伸ばして何かを探している。
 やっと取りあげたのは、さっき私が見つけた――言わばこんな状態に突入してしまった原因。
「これも取ろう」
 スカートも脱がされ、半裸状態で寝転がっている私のそばで彼もボトムだけを取り去る。
 ぴんと勢い良く飛び出したそれは、思っていたのより奇妙に色形で、何とも形容しがたいという感想。
 こんなのが、と思ってるうちに薄い膜が被せられ、再びのしかかってくる。
「俺は違うんだけどさ」
 わかってたけど、ちょっとずきんときた。
「貰うね」
「んっ……!っあ――はあっ!」
 くちゃくちゃとさっきより少し大きく聞こえた後、悪戯していた指がそれよりももっと逞しいモノに替えられて、これまで
何にも赦したことのない場所に入り込んでくる。
 初めては痛い。それは常識だ。知らないけど皆がそう言うから。
 文字通り逃げ腰になる私を彼の身体も追い掛ける。
 言われるように深呼吸して力を抜くよう努力する。
 どこかで無理やり何かをこじ開ける音がするような、そんな幻聴まで起こりかけた。
 腰を僅かに沈めつつ、胸の先を指の腹でつつきながらキスしてきて、ふっと息を吐いた拍子に中が奥まで広げられた気がした。
 私を見て小さく頷くと、小刻みに腰を動かし始める。
 擦れる痛みに唇を噛み締めると、軽くキスされた。
 動きが進むにつれ痛みにも慣れてくる。私の口元が緩むと同時にまた動きが強く速くなり、段々と腰の振りが大きくなる。
「ああっ――!」
 肌のぶつかる弾けるような乾いた音がして、反するように膝の裏側から腿につうっと汗が流れ落ちた。
「……きだ」
「増……」
「好き……んだ――千代、がっ!」
「あっ――私――」
 ぐっと今までの中で一番強く腰を突き出してきて、大きく震えて息を吐き出した。

「……いく……み……くん」

 ジンジンと痺れる痛みに繋がったままの身体を抱き寄せて、強くしがみついた。


387 :11/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:31:34.42 ID:8kwWndhK
* * *

「ばか!スケベ!エロゲスっ」 吹っ飛ばされた下着を拾ったのに返さず、鑑賞し始めた男をノーパンのまま罵った。
「スカート先にはくから」
「近くにあったんだもん!」
 コトが終わってしまってから、徐々に意識がはっきりし、素っ裸の下半身を思い出すと一気に現実に引き戻された。
 手慣れた様子でさっさと身仕度を整える増田くんを尻目にもたもたとキャミを引き下ろし、足下にあったスカートを見つけて
慌てて穿いた。
「千代は、スケベじゃないんだ?」
「ないっ」
「ふーん」
「何よ。何が言いたいわけ?」
「確か新品だったよな……下着」
「なっ!!」
 確かに、ブラキャミも下もおろしたてだけど。ていうかそんなのがわかるのって……どうなの?
「男の部屋に来るのに、何も期待しなかったとでも?」
「それは、そうした方が良いって言ったから……」
 早紀に今日の予定を話したら、どこも気を抜いちゃだめよって言うから。
「間に受けたわけね?」
「そうかも……」
 そりゃあ少しも考えなかったって言えば嘘になるけど、こんなに進むとは予定外だったとも言えないこともない。まあ、結果
なるようになったわけだけども。
 やっと返して貰ったショーツを身に着ける。汚しちゃったかな、ちょっとやだな。でも替えなんて持ってないし。次は最初
に脱いじゃった方が良いのかしら――って、次って!!
「何考えてんの?」
「ひゃっ!?」
 後ろから抱き締められて、下着の上からお尻をなでられる。
「やっぱりエッチな妄想してない?耳朱くなってる」
「してなっ……やっ」
「……もっと濡らしちゃおうか?」
「何考えてんの!だめっ」
「濡れちゃうってわかってんのな」
「違うもん!やだ触るな」
「余所ではしないから」
 それは困る。当たり前でしょ!って言いたいけど、元々そうしたモラルに欠けた所があった男にそれって通用するんだろうか。
「……誘われたら?」
「そういうのやめたっつったでしょ。だから千代で満足させて」
 そんな事言われても、それはそれで困る。


388 :12/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:32:44.45 ID:8kwWndhK
「ます……」
 ――ダンダンダンダンダンッ!!
「育実いるかー?」
 激しい階段を駆け上る音と威勢の良い声に驚いて、彼は後ろに、私は前に吹っ飛ぶように離れた。
「育実また雑誌やるわ――あ、あれっ?お客さん?」
「あ、お、お邪魔してます」
「いらっしゃい。俺こそ邪魔してごめんねー」
「何だよ!勝手に開けんな」
「あれ成実の靴だと思ったんだよ。あ、俺こいつの兄ちゃんです」
「小松原です」
「育実の事ヨロシクね。優しい奴だから。――あ、じゃこれお前いらんな?友達にやれや」
 紙袋を床に置くとき、じーっと部屋の隅を見つめる。その先を辿ってみると、私があっと思った瞬間増田くんが落ちてた物を
引ったくった。
「あー……兄ちゃんなんも見てないから」
「うるさい!早く帰れっ」
「増田くん、そんな言い方」
「いいからいいから。……あ、無くなったらうちから持って来」
「いらねえってば!」
 ニヤニヤと笑うお兄さんと真っ赤になってムキになる彼。
 あれ?増田くんてこんな人だったっけ?

 お兄さんが帰ってからは、嘘みたいに静かな家に戻った。嵐の去った後のよう。
「鍵掛けてないの?」
「留守じゃなきゃな。この辺じゃ普通」
 平和なんだな。ちょっと離れると違うもんだ。
「な、なんか面白いお兄さんだね」
「うるさいだけだよ。バカがつく程明るいとも言うけど」
「そんな……何かほら、持ってきてくれたんじゃないの?」
 私が指した紙袋を複雑な目で見て溜め息をつく。
「いらん気遣い過ぎなんだよ」
「なんで?優しいじゃない」
「中身見てみ?」
 何をそんなに嫌がるのか。不思議に思って中身を覗いてみてやっとそれを理解した。
「引いた?」
「あ……あはは」
 多分私、今、顔にタテ線入ってる。
 見た目はマンガや週刊誌のようだけど、所々それ系の記事が目に付くわ、何となくだけど、袋とじまで破ってそうだわ。
「そうやって俺やら外山に回してくれんのよ。自分が苦労したから俺らにはそんな事させたくない、らしい」
 や、優しさなのかそれは。


389 :13/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:33:38.01 ID:8kwWndhK
「弟思いのいいお兄さんじゃない?」
「弟思いねえ……」
 精一杯フォローしたつもりだったが、どうも納得いかない様子。
「彼女いるのにそーゆーもん持ってくるか普通」
「それは私が居るとは思わないからじゃ」
「いや、あの人にはそうした恥じらいとか気遣いとかはまるで無い。さすがに成実――妹には言わないけど」
「仲悪いの?悪気はないと思うんだけど」
「悪くはないけど……よくわからん。義理の兄貴だから。――姉貴の旦那なの、あの人」
 そうなんだ。ああ、そう言えば女きょうだいだけなんだっけ。
「可愛がられてるんじゃない?」
「そうかあ?……そりゃ、向こうも女ばっかの三人姉弟だから立場は同じなんだろけど」
「だったら尚更そうだよ。男の子同士だから仲良くしたくてたまらなそうじゃない」
『育実』と彼を呼ぶ声と、私に彼をよろしくと言った笑顔の中に残る真摯な眼差しが思い違いでないのなら――いや、きっと
そうだ。
 あの人の愛する妻の血を引く彼を、愛おしく想わない筈はないだろうから。
「あの人にはどうしたって勝てない。姉ちゃ……姉貴を人目もはばからず嫁が嫁がってのろけてすげー大事にするし、俺や成実も
 自分のきょうだいみたく守ろうとしやがる。バカのくせにくそ真面目だし嫁に見つかって怒られてもエロ本読んで勉強だとか
 ゆーし。つうか隠せよ」
 勉強って……。まあ、何だか一度会っただけだけど、取り繕った感じがしなくて、妙にすっきりとする。
 ていうか多分素直すぎてあんまりは怒れないよね、奥さん。
「許されるんだよ何もかも」
 しょぼんと丸まった背中にらしくないと思いながら、私は何となくそれに気が付いてしまった。
「……増田く……育実くんは育実くんでいればいいと思うよ」
 細っこい目を少しだけ丸くして、首を伸ばして私をまじまじ見る。
「なりたい人になろうとするんじゃなくて、今の自分を大事にして欲しいと思う」
 無理して明け透けな自分を作ろうとして、多分予想と少しずつずれてしまったのだ。現実はそううまくゆくものじゃない。


390 :14/14 ◆jj9fnfoR3g :2012/03/18(日) 22:35:45.80 ID:8kwWndhK
「だから。私の前だけでも」
 本当は臆病なひとなのかもしれない。
 男だから誰かを守りたいって気持ちがあって、誰かに――愛されたいって願いもあって。
 それを隠すためには強くありたい。私だってそう。
 そのために、自分の瞳にそう映る誰かになろうと鏡の中の自分を造り上げようとしてたんだ。
 私にとってはそれがどんな人間なのかよくわからないでいる。でも彼には居たんだ。近付きたいと思える誰かが。
「育実くんには育実くんの良さがあるよ。多分不器用なんだと思う。けど」
 あの人とは違う。
 自分をどんなにさらけ出してるようでも何かを無理してるから、どこかちぐはぐして時に誤解を生む事もあったのかもしれない。
「私は……育実くんが好きだよ」
 そうじゃなきゃいくらなんでも、あんな真似できるわけないじゃん。
「幻滅とかしないの?つまんねーちいせー男だって」
「最初にしたからもういい」
「……あんまりアレも上手くないし」
「?――知らないよっ!!」
「今更隠しても仕方ないから」
 別にどうでもいいんだけど。知りたいわけでもないんですけど。
「自分から押し倒したの、初めてだわ」
「……あ、そう」
 もしかしたら喜ぶとこかな?ここは。
「私わかんないもん」
 ――でも、嫌じゃなかった。 そう小さく呟いてみたら、ちゃんと聞こえたみたいで、今までで一番優しく肩を抱かれてキスされた。
「じゃ、二度目ある?」
「……私以外、拒んでくれたらね」
 ぎゅっと抱く腕の力が強さを増した。
「ずっと、いくみくん、て呼んでいい?」
「うん。――千代」
「なに?……育実くん」
「いっぺん電車で尻さわ……いてっ!!」
 背中に回していた手で思いっきり肉を摘んでやった。
「痴漢と一緒じゃん変態!」
「じゃ、今なら?」
 これは犯罪じゃないとばかりにお尻を揉んでくるし。
 ――結局、男の本性ってこうなわけ?

「風邪移したら看病してあげるからさ」
「ばかっ」

 あんまり裏も表も実は変わらないんじゃ?と不安が募る私だった。


――終――

長々ありがとうございました


391 :名無しさん@ピンキー:2012/03/19(月) 00:55:47.47 ID:9mGmqK5/
ゲス田くん可愛いなー。
いきなり千代ちゃんの初体験とは読むまで思わなかった。
面白かったけどちょっと展開早いかなーって思った。でもこれは自分の感覚でわってことだけどね。
お友達の話も読んで見たいと思うような、ほんわかで良い人物設定と思います。
楽しみに読ませていただきました。GJっす!

392 :名無しさん@ピンキー:2012/03/23(金) 21:21:26.95 ID:izDI1Nnq
確かに後半の展開がちょっと駆け足だった気もするけど、
楽しく読ませていただきました。ありがとう!

393 :名無しさん@ピンキー:2012/05/04(金) 14:39:08.92 ID:8XscgzCB


460 KB [ 2ちゃんねる 3億PV/日をささえる レンタルサーバー \877/2TB/100Mbps]

新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :


read.cgi ver 05.0.7.9 2010/05/24 アクチョン仮面 ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)